機能創造ニュース

谷貝研究室所属の四年生が国際会議でポスター賞を受賞しました。

2016年12月07日

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受賞者:赤井 遥 (理工学部機能創造理工学科4年)
受 賞:Asian ICMC Outstanding Poster Presentation Award
会議名:1st Asian ICMC-CSSJ 50th Anniversary Conference
題 目:Experimental Investigation of Strain Distribution of YBCO under Complex Bending Situations and its Effect on Superconducting Property(日本語題目:複合的に加わる歪みがYBCO高温超電導テープ線材の超電導特性に及ぼす影響の実験的な研究)
受賞日:2016年11月10日
指導教員:谷貝 剛 (理工学部機能創造理工学科 准教授)

谷貝先生に受賞された業績についてご紹介いただきました。

Q)この研究が評価されたポイントを詳しく聞きたいのですが、まず磁石の力で浮いて走る超電導リニアでも耳にします、「超電導」を簡単に説明して頂けますか?

A) はい、大雑把に言うと、「超電導=電気抵抗がゼロ」になる現象の事です。小さく狭い空間でも大きな電流が流せるので、超電導リニアのように、強い磁場が必要な機器や、それを「エネルギー」として貯めておける装置に利用できます。ただし、日常生活ではありえない「低温」が必要になります。

Q)でも、研究題目には「高温」とありますが・・・・

A) よく気付きましたね! 実は超電導体は、超電導になる温度によって、大きく分けて「低温超電導」「高温超電導」の2種類に分けられます。低温超電導は、-269℃くらいの液体ヘリウムで冷却して使います。今回研究に使った「高温超電導」は、それよりずっと高くて、-196℃の液体窒素で冷却して使います。

Q)ああ、夏にアイスクリームを買うと、よく付いてくるやつ!

A) いやいや、それは「ドライアイス」で、固体の二酸化炭素です。温度は-77℃で、固体から直接気体になってしまうので、液体にならず「ドライ」なんです。実験に使った液体窒素は-196℃ですので、ドライアイスよりも120℃近く低い「液体」なんです。

Q)確かにどちらも日常ではありえない低温下で使うんですね。それらの違いは、温度以外にあるのですか?

A) いい質問です。よく出回っている低温超電導は金属で、曲げたりしても強くて、ちょっとやそっとでは特性がおかしくならない材料で出来ています。一方で高温超電導は、例外なく銅の酸化物、つまり1種の「セラミック」なんです。とても硬そうだけど、何だか脆くてすぐ割れそうですよね?

Q)では形が初めから決まっているのでしょうか?だって作った後に曲げたりしたら大変ですよね?

A) そう、「線材」というからには、どこから引っ張り出してきて、何かに巻き付けて使わないといけないんです。ちょうど、この図ように。
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 特に右側のように、平たいテープ線を曲げるって大変そうでしょう?実は少しでも曲げやすくするために、高温超電導は金属の母材の上にかなり薄い層状構造にして、さらに金属保護層を被せて作ります。次の図はそれを簡単に表したものです。
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超電導層は、なんと1/1000 mmしかないんです!全体でも0.2mmくらい。それで幅が4~5mm、小指の爪の半分くらいの狭い幅に、300Aほどの電流を流します。

Q)大きすぎて実感がわかないですね・・・

A)家で使うドライヤーと何かを一緒に使っていて、ブレーカーが落ちた事ありませんか?

Q)あるかも! 「バチン!」って音がして、突然真っ暗になった!

A)ドライヤーがたくさん電流を流すので、ブレーカーが安全装置として働いて電流を無理矢理切るのですが、それが10Aくらいでしょうか。

Q)小指の爪よりも狭いテープで、しかも薄いのに30倍ってすごいですね!

A)そう、狭い範囲でたくさん電流が流せる事が、ひとつ、大きなウリなんです。
低温超電導と高温超電導の違いに戻ると、高温超電導は発泡スチロールの容器に液体を注いで実験出来るのに対して、低温超電導は、大がかりな真空断熱容器が必要になるんです。つまり、実験する前から実験している間まで「コスト」が断然安い。

Q)やっぱり安くないと、なかなか一般にユーザーが増えないですよね。

A)そうなんです。ある程度安くて、しかも大きな電気エネルギーを貯める装置が身近にできたら、なんだか良さそうでしょう?

Q)大きな電力は、「貯められない」って聞きました。携帯電話用にバッテリーなんかもたくさん用意して、それで貯めればいいんじゃないですか?

A)確かにリチウムイオン電池などの2次電池は安くてたくさんあって、魅力ですよね。でも、大きな電力を短い時間でやり取りするには、やっぱり狭い空間にたくさん電流を流せる超電導が有利なんです。最近太陽光発電や、風力発電がたくさん見られるようになったでしょう?

Q)それらと電気を貯めるって事はどんな関係が?

A)太陽光発電は、「お天気」の時にしか発電できませんよね?でも電力は「使いたい時にないと困る」ものですよね? だから、大きな電力を貯めて、使いたい時に瞬時に取り出す技術が必要なんです。

Q)でもどうしたら電気を貯めることができるのですか?

A)次の図を見てみましょう。普通の線材は電源につないで、電流を流しますが、抵抗があるので、発熱します。当然電源を切ると、電流は止まります。これを先ほど見たようなコイル形状にすると、左下の図のように、電源がなければ、あっという間に電流は消えてしまいます。でも抵抗ゼロの超電導ならば、右下図のように電流が無くならないで、ずっと流れ続けるんです!この状態が電流=磁場の状態で電気エネルギーを貯めている事になるんです。
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この研究で設計されたコイルは、さらに次の図のような形をしているんです。
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Q)うわ!すごく複雑に曲がっている!なんでこんな事する必要があるんですか?

A)大きな電力を貯めるには、先ほど言った通り、大きな電流を流しっぱなしにする必要があります。すると同時に、テープ線材にものすごく大きな力がかかる事になる。

Q)高校で習った「電磁力」ですか?

A)そう。電流と磁場によって力がかかる。フレミングの左手の法則ですね。普通、電力貯蔵コイルでは、その電磁力を押さえ込む「電磁力支持構造物」が大きく、重くなります。しかし、ある原理を使って、かかる力が微妙にバランスするコイルの形にすると、そのような構造物はほとんど必要ないんです。
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Q)つまり、よりコンパクトになる?

A)その通り。シンプルな構造でたくさんの電力を貯める。さっきのコイルは「電磁力平衡コイル」と呼ばれます。総合的に見てコストの安い線材で、シンプルな形状のコイルが作れるのは大きなメリットですが、その代償としてテープ線材には複雑な曲げ変形(歪み)が加わるんです。

Q)折角作ったのに、まともに働かないんじゃ意味がなくなっちゃいますね?

A)そう。コイルを作る前に「何が問題になるのか?」を知る事が工学的に大切ですよね。そこで、実際に複雑な歪みを加える装置を開発して、歪みの値や超電導の特性がどのように影響されるかを実験的に評価して、「これぐらい歪みが加わると超電導はダメになります」という限界を定量的に明らかにした事が評価されて、今回栄誉ある賞を受賞する事ができました。

Q)受賞したのは、先生の指導する学生さんですね?

A)学部4年生の赤井遥さんです。積極的に実験を行って、優れた成果をあげてくれました。研究室に配属されてから、僅か半年での受賞は驚異的です。

Q)しかも英語で発表する国際会議というのも凄いですね!

A)機能創造理工学科では、科学技術英語といった理工系学生がグローバルに活躍するために必要な英語教育や、機械・電気電子・物理といった、理工学に必要な知識を幅広くかつ深く学べるシステムが整っています。今回の受賞は、当学科の教育・研究制度がうまくかみ合った結果ではないかと思っています。