menu close
MENU
2017.03.29

平野研究室所属の大学院生が国際会議で受賞しました

機能創造理工学科の平野研究室の坂井あづみさん(博士前期課程1年)が国際会議Quark Matter 2017にてElsevier Young Scientist Awardを受賞されました。そこで坂井さんに受賞された業績についてご紹介いただきました。

学会名:Quark Matter 2017(クォーク物質2017)
賞名:Elsevier Young Scientist Awards
受賞者:坂井 あづみ(物理学領域博士前期課程 1年)
題目:Hydrodynamic fluctuations in Pb+Pb collisions at LHC(LHCエネルギーの鉛-鉛衝突反応における流体揺らぎ)
受賞日:2017年2月11日
指導教員:平野 哲文(機能創造理工学科 教授)

Q)会議の名前がQuark Matterでしたね。まずクォークって何ですか?
A)クォークとは物質を構成する最小単位である「素粒子の一種」です。身の回りの物質は原子からできていて,原子は原子核とその周りをまわる電子から,原子核は陽子と中性子から,更に陽子や中性子はそれぞれ3つのクォークが集まってできています。

http://higgstan.com/

Q)次に,研究について聞かせてください。今回の題目は「LHCエネルギーの鉛‐鉛衝突反応における流体揺らぎ」でしたね。まずLHCって何ですか?
A)LHCはLarge Hadron Colliderの略でヒッグス粒子の発見で有名となった加速器です。周長27kmもあるんですよ。
この加速器で鉛原子核を光の速さ近くまで加速させて互いに衝突させると超高温状態を作ることができます。

https://hep-project-dphep-portal.web.cern.ch/sites/hep-project-dphep-portal.web.cern.ch/files/lhc-map.jpg

Q)どのくらい高い温度なのですか?
A)なんと数兆度に達します!太陽の中心よりも5桁も高い温度です。超高温状態では陽子や中性子ですらバラバラに壊れ,その中に閉じ込められていたクォークやそれをつなぎとめていたグルーオンが解放されます。このクォークでできた物質(Quark Matter)の状態をクォークグルーオンプラズマと呼び,その物性を調べようとしています。

Q)クォークグルーオンプラズマ?
A)ビッグバン直後の初期宇宙はクォークグルーオンプラズマで満たされていました。クォークグルーオンプラズマの物性について調べることで初期宇宙についても知ることができるのです。

Q)なるほど。ところで題目に流体とありますが,素粒子と流体ってなんだか結びつきませんよね…?
A)確かにクォークやグルーオンは素粒子であり単体の性質が注目されますが,面白いことにそれがたくさん集まると流体のように振る舞うことが発見されました。宇宙の始まりが流体って,なんか不思議ですよね。

Q)そうですね。
A)今回の研究はクォークグルーオンプラズマが,どんな流体なのかについての研究です。

Q)どんな流体…。それは,どういうことですか?
A)流体といってもその特徴は様々ですよね。今まで流体がドロドロしているのか,さらさらしているのかといった「粘性」についての研究が多くなされてきました。でも粘性と切っても切り離せない関係がある「揺らぎ」の効果はあまり研究されていませんでした。この研究ではクォークグルーオンプラズマに流体揺らぎの効果を取り入れた数値シミュレーションをおこないました。

Q)揺らぎってなんですか?
A)少し難しい話になるので簡単な例を出しましょう。突然ですが,サイコロを繰り返し振って出る目の数を平均したら何になりますか?

Q)3.5です。
A)そうですね。しかし、1回の結果だとどうでしょう?

Q)3.5にはならないですね。1とか2とか。
A)そうです。一回一回の結果は平均値の周りでばらついています。こういうのを揺らぎといいます。これまでの流体は「平均」ばかりが注目されてきましたが、一回一回の結果は実際にはどうなっているのか。今回は鉛原子核どうしの衝突反応毎のクォークグルーオンプラズマの振る舞いのばらつき,つまり「流体揺らぎ」の効果を取り入れました。

Q)研究の特徴は?
A)この流体揺らぎを取り入れた本格的な流体数値シミュレーションを行うことでクォークグルーオンプラズマの物性研究により深く踏み込むことができました。

Q)初めての国際学会,どうでしたか?
A)海外の研究者と会って直接議論することができたのがとてもいい経験となり,刺激も受けました。上智大学では,科学技術英語など英語の授業にも力をいれています。今回は授業でプレゼンの仕方を学んだのを思い出しながら発表に臨みました。また上智大学から「女性研究者グローバル育成奨励賞」も受賞させていただき,女子学生が国際学会へ参加する際のサポートが充実していると感じました。