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宮武研究室所属の大学院生が学生優秀論文賞を受賞しました

2017年11月22日

機能創造理工学科宮武研究室の大場直樹さん(博士前期課程1年)が第54回鉄道サイバネ・シンポジウムにおいて学生優秀論文賞を受賞しました。そこで大場さんに受賞された業績についてご紹介いただきました。

受賞学会: 第54回鉄道サイバネ・シンポジウム(東京)
https://www.jrea.or.jp/cybernetics/member/?p=55499&info=true
題目:「信号現示を考慮した列車の省エネルギー運転曲線導出」
受賞日: 2017年11月9日
氏名: 大場 直樹(電気・電子工学領域 博士前期課程1年)
指導教員: 宮武 昌史(機能創造理工学科 教授)
主催: 日本鉄道サイバネティクス協議会
http://www.jrea.or.jp/cybernetics/member/

Q) 大場さんの研究の背景はどのようなものでしょうか?
鉄道はとてもエコな輸送機関であることをご存知でしょうか。鉄道は自動車や航空機と比べて,はるかに少ないエネルギー・二酸化炭素排出量でたくさんの人・物を運ぶことができます。そして近年,地球温暖化防止や節電の取り組みを色々な所で見かけますよね。そうした背景もあって鉄道の環境性が注目されています。しかしながら電気鉄道は日本全国,そして世界中で走っていて,大きな電力を消費する産業の一つでもあります。ですから鉄道も更なる省エネルギーの取り組みは必須で,より環境に優しくならなければなりません。

Q) 鉄道の省エネルギー化にはどのような方法があるのでしょうか?
手っ取り早い方法は,既存の機器を良い新しい機器に交換することです。新型のモーターに交換したり,照明をLED化したりすることですね。これらの対策は新しい物を買わなくてはならないので,どうしてもお金も時間もかかります。今あるものをうまく活用する努力も必要で,その一つに運転手法に着目した省エネルギー化があります。

Q) 鉄道の省エネルギー運転とはどのようなものでしょうか?
皆さんは自動車のエコドライブなら耳にしたことがあるのではないでしょうか。鉄道も自動車と同じように,運転の仕方を工夫することで省エネルギー化を図ることができます。これならお金もかからないし,導入の時間も比較的短く,鉄道会社にとっても取り組みやすい環境対策になります。近年,国内外で注目されています。

Q) 具体的にどのような検討をするのですか?
鉄道はダイヤ通りに運行するため,決まった距離を決まった時間で移動する必要があります。どのタイミングでどのくらい速度を出せばよいか考えるために,【図1】に示すような「運転曲線」と呼ばれるグラフを描いて検討します。省エネルギーな運転方法を見つけるためには,様々な運転について列車の運動と必要なエネルギーを計算し,最も省エネルギーなものを見つけることになります。実際の線路には勾配や速度制限といった複雑な特性が多くあり,実はこれを数学的に解くのは困難で,コンピューターを用いて,計算方法を工夫して解く必要があります。実用的に省エネルギー運転方法を求める研究が世界中で進んでいます。

【図1】

Q) 大場さんはどのような研究を行ったのですか?
都会で電車に乗っていると「前の列車に接近しているため,停止信号で止まっています」なんてアナウンスを聞くことはありませんか。【図2】のように,列車が混み合っている時に良く発生する場面です。実はこのとき,余計な加減速を行うために時間だけでなくエネルギーが無駄になっているのです。このようなケースで,遅延を減らすための研究は盛んに行われていましたが,エネルギーに焦点を当てた研究は多くありませんでした。私はそこに着目し,信号を考慮した場合の省エネルギー運転を求める方法を開発しました。その新たな計算方法や導かれた運転手法が評価され,今回の受賞に繋がったのではないかと思います。

【図2】

Q) 今後どのような方向に発展することが見込まれるでしょうか?
自動運転システムや運転支援システム※に組み込んだりすることで実際の鉄道運行に取り入れることができると思います。しかしこのためには課題もあり,現状では長い計算速度がネックとなっています。計算アルゴリズムの改良や,計算機の性能向上が必要です。実用化に向けて,今後も研究を続けていきます。
※運転支援システム:運転士に対して走行すべき速度や行うべき運転操作を指示する鉄道車両の運転台に備えられた装置

Q) ところで,【図1】に書いてある問題の答えは?
あっ,説明に夢中になってて,答えを言うのを忘れていました。条件によっても変わる可能性もありますが,青色よりもオレンジ色の方が一般には省エネです。

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